プリント管理システムではマルチベンダ対応をするために、大きく分けて2つのアプローチが考えられます。
- プリント管理ソフト開発会社が作成した専用ドライバを提供して印刷させる
- メーカー各社のネイティブドライバを使って印刷させる。そのため、各メーカーの言語に適時対応
PaperCut MF/Plusは上記2の方式を採用しております。
1の専用ドライバをソフト開発会社が提供する場合(他社製品)は共通ドライバになるため、画質の劣化、プリンタが本来持っているオプションの設定が出来ない場合があります。また、新規にプリンタを導入する場合、別途カスタム開発費が発生する場合があります。
2の場合(PaperCutの場合)の利点はメーカー提供のドライバを使うため、メーカーが提供しているすべてのプリンタ機能が使える上に画像処理なども適切に行われ、最高の画質を得ることが出来ます。マイナス面はメーカーが新しいドライバに対して大きな変更を加えた場合、ソフト開発会社が適時対応して行かなければならないことになります。そのため、COSYでは毎年リリースされる新機種に対して、顧客依頼ベースで動作テストを行っています。問題がある場合はPaperCut MF/Plus本体ソフトウエアの修正が必要になりますので、その対応に若干の時間がかかる場合があります。
PaperCut MF/Plusはマルチベンダ対応をするため、各メーカーで使用しているプリンタ言語への対応を行っております。
PaperCut MF/Plus 対応言語としては以下の通りです。
- キヤノン LIPS-LX, LIPS-4
- リコー RPCS
- 富士フィルム ArtEX, PCL-5c, PCL-6
- エプソン ESCP
- コニカミノルタ、京セラ、東芝 PCL-6、PCL-XL、PCL-5c
- Adobe PostScript Level3
世界デファクトスタンダードのプリンタ言語と日本国内市場でしか使われていないプリンタ言語について
< ポストスクリプト レベル3 >
世界の印刷業界で最も普及しているプリンタ言語としてAdobe 社のPostScript Level3があります。この言語はPDFなどの文書フォーマット、PC用アプリ画像から、印刷機械のスクリーン設定、フォントレンダリングに関して広範囲にサポートしている高度な画像生成システムであり、海外の複合機やプリンタの上位機種では、この言語に対応しており、名実ともに印刷業界のスタンダードとなっております。
ポストスクリプトを使うにはポストスクリプトドライバとプリンタ側にポストスクリプトインタープリタが必要になります。このプリンタ側のインタープリタとしてAdobe社からライセンスして自社プリンタに搭載しているメーカーと、自社でコンパチ品であるクローンインタープリタを開発し、自社プリンタに搭載しているケースがあります。Adobeの純正インタープリンタは非常にライセンス費が高額であるため、中級機ではこのクローンインタープリタを搭載している場合が多くあります。この場合、メーカーにより品質のばらつきがあり、低価格を売りにしているメーカーの機種では印刷はできるものの、コンパチ性が悪い商品が出回っています。PaperCut社は基本はAdobeのポストスクリプトに準拠した設計を行っており、このようなコンパチ性の悪いプリンタでは部分的に印刷情報の検知が出来ない場合があります。これはプリンタメーカー側の品質問題であり、制限事項となります。
もう一つのデファクトスタンダードとして米国、ヒューレットパッカード社がレーザージェットプリンタ (HP Laser Jet Printer )用に開発したPCL言語があります。
< PCL言語 Printer Command Language >
PCL言語はプリンタ側の設定を定義したPJL言語 (Printer Job Description Language) とPCLコマンドセットから構成されており、PCLドライバで画像をレンダリングしたときにドライバ側がこのコマンドをページ分生成し、LANを経由してプリンタに送ります。このデータはプリンタバッファを経由して、ディスプレイリストに落とし込まれ、順次、同期を取りながら、プリントエンジンに送られていきます。
< 主に日本市場でしか使われていないメーカー製プリンタ言語 >
コニカミノルタ、東芝、京セラ、シャープ、沖、ブラザーなどは主力市場が海外であるため、日本市場への投入モデルにも、海外と同様のデファクトスタンダードであるポストスクリプトやPCL言語を採用しています。これは、わざわざ日本向けに開発する工数増の意味が無いからです。これらのメーカーはデフォルト言語はPCLとなっているケースが大半です。
キヤノン、リコー、富士フィルム社は日本市場で比較的大きなシェアを持っているため、海外モデルとは別に日本市場向けに異なるプリンタ言語の製品を供給し続けています。これらのガラパゴス化したプリンタ言語への対応が難しく、海外のプリント管理ソフトメーカー各社は日本市場への参入が非常に困難となり、現在でもこれらのメーカーの機種を管理するにはプリンタメーカー製のツールが多く使われています。
PaperCut MF/PlusについてはCOSYにて考えられうるテストを地道に行うことにより、日本独自のプリンタ言語に対応しております。ただし、プリンタメーカーがドライバの設計を変更した場合はその対応のためにタイムラグが発生します。ウイルス対策ソフトがゼロデイアタックに対応できないのと同じく、メーカーからの事前通知が無い場合、新製品が出てからの対応となってしまいます。これがPaperCut MF/Plusの制限事項となります。
< メーカーのPS,PCLへのコンパチ性の問題に起因する制限事項 >
Adobe社の純正PDLインタープリタをライセンスしていない場合、各メーカー、いわゆるクローンPSを搭載しています。富士ゼロックス、リコー、キヤノンなどは、わざわざ、高価なPSオプションとしてAdobeの純正品を提供していますが、他のメーカーでは一般的にクローンインタープリタを搭載しています。このクローン製品は品質のばらつきが大きく、本家Adobeよりも高速高性能のものもあれば、コンパチ性に問題のある製品も見受けられます。
コンパチ性に問題があるプリンタの場合、PaperCut MF/PlusがPS制御コマンドを送っても反応しなかったり、間違った動作を行う製品があります。残念ながら、これは対応プリンタの制限事項となります。
<Mobility Print、Global PostScriptドライバ の制限事項>
PaperCut Mobility Print で使われるPaprCut Global PostScript ドライバはレンダリングエンジンとしてGohstScriptを採用しており、このGohstScriptが対応していない場合やバグがある場合はそれがそのまま制限事項となります。
<既知の問題>
リコーRPCS言語: Mobility Print を使うとカラー、モノ黒判別が出来ません。リコー機でMobility Printを使う場合はPostScriptオプションを装着してください。
富士フィルム ArtEX言語:Mobility Print を使うと小さい文字9Pt以下の場合画像が不鮮明になる場合があります。
<大判プリンタにおける制限事項>
PaperCut MF/Plusは大判プリンタも管理できますが、各社、モデル、シリーズごとに細かな仕様変更を行い続けているため、正確にロール紙長や、カラー、モノ黒属性をPaperCut 側で検知するためには、導入前に実地検証が必要になります。検証済みのリストは用意させていただいておりますが、プリンタ側でマイナーな仕様変更が行われている場合がありますので、必ず、導入前にご相談下さい。
<GDIプリンタ対応の制限事項>
安価な家庭用プリンタなどでは、Windows GDIを使ってPC側でビットイメージを生成し、圧縮後、プリンタに送信しているケースがあります。このようなプリンタの場合、プリントサーバには圧縮されたビットイメージデータのみが送られてくるため、PaperCut MF/Plus側でページ数、カラー属性など判断できないモデルがあります。
PaperCut MF/Plusの仕様としては、これらのプリンタは対応外となります。ソフトウエア対応はできませんので、必ず対応プリンタ言語を搭載したプリンタをご使用下さい。
<コピー機能のゼロストップ>
デジタル複合機のコピー機能はCPUを介さず、DMA転送でデータを送っているため、複合機そのものが枚数をリアルタイムで検知できません。従って、PaperCutは残ポイントがゼロとなっても、即座に停止することが出来ない場合があります。
<OCR機能(PCMF)>
統合スキャン機能の設定オプションとして、OCR機能が有りますが、OCRエンジンそのもの性能、スキャン原稿の品質、スキャンテーブルに置いたときの傾きなど光学的影響で、正しく文字が認識されない場合があります。これはOCRソフト全般的に言える問題で、PaperCut MFにおいても100%文字認識率を保証するものではありません。PaperCut MFのOCR機能はスキャン文書をWindowsなどで、PDF文書を検索する場合のバックグラウンドキーワードリストとするためのもので、文字光学変換を目的としたツールではありません。